ヴェッキオ橋を渡る際は、16 世紀から橋の上に軒を連ねる金細工店をのぞいてみてください。橋の中央は展望バルコニーになっていて、橋の下を優雅に流れるアルノ川を見渡せるようになっています。昼間は、大道芸人やアーティスト、観光客が集まりにぎやかな雰囲気。日が暮れて店のシャッターが下りると、橋の上はぐっとムーディな空気に包まれるので、ロマチックな夜の散歩にぴったりです。
「古い橋」の意を持つヴェッキオ橋は、その名の通りフィレンツェ最古の橋です。記録によると橋がこの地に架けられたのは 996 年。今私たちが目にする橋は 1345 年に再建されたものです。特徴は、川をまたぐ 3 つの大きなアーチ。明るい黄色が目を引く店の壁と、いくつも並ぶ小さくて四角い窓が水面に映りこむ様は、フィレンツェを最も象徴する光景の 1 つとして人々に愛されています。この橋は、第二次世界大戦でフィレンツェから撤退する際に、ドイツ軍が唯一破壊しなかった橋でもあります。伝わる話によると、そう命令したのはヒトラーだったとか。
橋の上には宝石商が軒を連ね、貴重なアンティーク品から手頃な価格のお土産までさまざまな宝飾品が売られています。金細工職人がここに店を構えるようになったのは 1593 年。フェルディナンド 1 世が、においのする肉屋と八百屋を橋から立ち退かせたときです。橋を真ん中まで進むと、険しい表情にひげを蓄えた有名な彫金師チェッリーニの胸像が目に飛び込んできます。胸像の後ろにはアルノ川を臨む美しい景色が広がります。
上を見上げれば、ヴァザーリの回廊が伸びるのが見えます。1565 年に大公コジモ 1 世がヴァザーリに命令して作らせた廊下です。これによって、コジモ 1 世は誰にも邪魔されずに市庁舎 (ヴェッキオ宮殿) から自宅のピッティ宮殿を行き来することができたのです。
地元の言い伝えによると、ヴェッキオ橋に南京錠をくくりつけ、そのカギをアルノ川に投げ入れたカップルは、永遠に結ばれるといわれています。そのため、橋のいたる場所に南京錠がつけられているのを目にすると思いますが、絶対に真似しないでください。大量の南京錠のせいで橋が損傷したことから当局が規制に乗り出し、つけている所を捕まれば高額の罰金が科せられます。
ヴェッキオ橋は 24 時間いつでも訪れることができます。