「日本の道百選」に選ばれた「哲学の道」の名は、日本を代表する哲学者の西田幾多郎が散策しながら思索にふけったことから付けられました。銀閣寺と南禅寺を結ぶ琵琶湖疏水沿いのこの道は、桜の季節になると桜色のトンネルができ、その後は美しい新緑が頭上を覆います。秋になると木々の葉が色づき、紅葉を愛でることができます。たがが道、されど道。季節によってまるで別世界のようになるからこそ、哲学者を始めとした人々を引きつけているのかもしれません。
元は明治時代に整備され、いくつかの橋がかかった緑あふれる道でした。その道の片端のすぐ近くに佇むのが、室町8代将軍足利義政が創建した東山殿が後に禅寺になった銀閣寺。向月台と銀沙灘が印象的です。観音伝(銀閣)は、質素ながらもわび さびが表現されています。哲学の道を南へ行くと法然院や安楽寺、さらに紅葉の名所として名高い永観堂をはじめとした禅寺や寺院、神社のそばを通ります。
銀閣寺から南下しながら散策する人を最後に迎えるのが臨済宗南禅寺派の大本山、南禅寺。室町時代には日本禅宗で最も格式高い禅寺になりました。ここは見どころが多いのですが、なかでも「虎の子渡しの庭」と呼ばれる小堀遠州作の枯山水庭園や水路閣はお見逃しなく。さらに、京都三大門に一つに数えられる三門からは京都市を見渡すことができます。また、本格的な坐禅や写経を体験できるので心の安らぎとリセットを試みてはいかがでしょう。
哲学の道を散策するだけなら30分程で済みますが、道沿いには多くの見どころに加えてカフェにレストラン、雑貨店などがあります。寄り道しながらゆっくり過ごすのも良いかもしれません。
西田幾多郎: 1870(明治3)年生まれ、1945(昭和20)年没。京都大学教授、名誉教授銀閣寺: 拝観料有、季節によって変動。南禅寺: 境内自由。方丈庭園、三門は入場料有。