投稿者 : トラベル ライター、投稿日 2019 年 7月25日

「神の子池」「裏摩周」「オンネトー」——北海道でゆったり“水に癒やされる”旅

「清流」という言葉が好きだ。

神奈川で生まれ育った私にとって、美しい自然の水というのは身近なものではなかったからこそ、憧れがあるのかもしれない。

今回は、春の北海道で思いきり“水に癒やされたい”と、2泊3日の行程で巡ってきた。

オホーツク海

前日に羽田からの最終便で女満別空港に到着。そこからレンタカーで網走へと向かい、ビジネスホテルで1泊した。

翌朝7時30分、初めて見るオホーツク海に感動しながら、道東の“水”に癒やされるため、一路、水底が青く光るという「神の子池」へ。

網走市内から神の子池へは車で約1時間半弱かかる。神の子池には住所がないので、カーナビにJR釧網(せんもう)線の「緑駅」をセット。

車内では、松山千春の『大空と大地の中で』を聞きながら北海道気分を高めつつ、安全運転でドライブを楽しんだ。

緑駅を過ぎると道路案内の青い看板が現れる。神の子池の入り口までは1本道だ。

神の子池 入り口の看板

入り口の看板から神の子池までは舗装されていない山道を2kmほどのぼる。

神の子池周辺は思っていたより気温が低くなく、心地よい風が吹いていた。それだけでも、ここまで来た価値がある。

道の横に流れる小川

道の横には小川が流れていた。これがまた美しい。

神の子池

神の子池

午前9時、神の子池に到着。

周囲220m 水深5mの小さな池は、摩周湖(カムイト=神の湖)の伏流水からできているという言い伝えから「神の子池」と呼ばれているそうだ。

水底が美しいブルーに光り、水が流れる音と、小鳥のさえずりしか聞こえてこない。

神の子池を小1時間ほど眺めていただろうか。ゆったりとした時間が過ぎていく。

枝から新緑が芽吹きはじめていた。きっとこの記事を読んでくれた方がここを訪れるころには、一面緑でよりキレイなんだろうなぁなどと考えていた。

摩周湖に向かう道

次に向かうのはアイヌ語で“カムイト=神の湖”と呼ばれる「摩周湖」。“神の子”を見た次は“神の湖”へと車を走らせる。

摩周湖には展望台が3つあるが、その中で神の子池からのアクセスもよく、最も観光客が少ない「裏摩周展望台」へ。少し雲行きが怪しいのが何とも心配だ。

裏摩周展望台

10時30分「裏摩周展望台」に到着。神の子池からは20分ほどで着いた。

山頂の展望台ということで気温が低く、肌寒いぐらいだ。

正直な話、摩周湖はあまり期待していなかった。「神の子池から近いし、ついでに寄っておこう」程度で考えていた。

でもそれが大間違い。澄んだ空気と透明度の高い美しい湖が、眼下に広がる。アイヌの人々が“神の湖”と呼んだ理由がわかる気がした。

この感動を写真では伝えるのは、これが限界かも。ぜひ一度足を運んでほしい。

摩周湖を出た直後、まさにバケツをひっくり返したような大雨。北海道は道が真っ直ぐなので、どこから雨が降っているのか遠くからでもわかる。

午後は釧路川でカヌー体験をする予定なので、天気が心配だ……

と、思ったのもつかの間。いきなりの夏空。

道東の天候は変わりやすいのだろうか。とりあえずカヌーは乗れそうなのでひと安心。

11時30分、予定より早く屈斜路湖に到着。カヌーツアーは13時からのなので、ここで昼食休憩。

湖畔のレストランで「コタン丼」(1200円)をいただいた。甘辛い焼き肉風のタレに豚肉と行者ニンニク。これが絶品!勢いよくかきこんだ。

13時、今回カヌーツアーでお世話になる「リバー&フィールド」に到着。

釧路川をカナディアンカヌーで下る体験ができるということで、事前に電話で予約しておいた。

説明を受けてから、ガイドの方と徒歩で屈斜路湖畔へ。

私も知らなかったが、実は釧路川の源流は屈斜路湖だそうだ。ここから釧路市方面の太平洋まで流れ、途中、釧路湿原を形成している。

カヌーに乗るにあたっての注意点とパドルの漕ぎ方を教わったら、早速、湖へ。

13時15分、屈斜路湖をカヌーで出発。

この時期の屈斜路湖はシーズンオフということもあって私たち以外誰もいなかった。湖上を独り占め状態だ。感動のあまり、途中漕ぐのを忘れ、景色に見入ってしまっていた。

後ろのガイドさんが操舵をしてくれるので、力のないお子さんや女性の方でも十分楽しめそうだ。

屈斜路湖は遠浅で水が澄んでいるため、湖底がはっきりと見える。ガイドさんに許可をいただいて水に手を入れてみると、ヒンヤリ冷たい。

橋をくぐった先から釧路川。真っ暗な橋架下が釧路川への期待を高めてくれる。

13時25分、カヌーで釧路川へ。まだ木々は青々とする前だったが、とにかくワクワクが止まらない。

釧路川の上流は、流れが穏やかで、ゆったりとカヌーが進んでいく。

気がつくと車内で聞いていた『大空と大地の中で』を口ずさんでいた。

「ああ、最高だ」本当に何度もそう思った。

清流と風景、たまに現れる鳥たち。川の周りを木々が囲んでいて、人工建造物が見えてこないので没入感がすごい。

読者の皆さんにもこの雰囲気をより味わってもらえればと、音声も録音してみた。

 

カーブを曲がると3頭のシカの家族が、川の真ん中で、水を飲んでいた。

「あっ!!!シカだ!!!」私の大声が静かな川に響き渡る。当然シカたちは一目散に逃げていった。

なんとかレンズに収められたが、これが家族で水を飲んでいるシーンだったらなぁと嘆くとともに、自分の稚拙さに呆れた。

ガイドさんいわく、「シカは年に1〜2度しか現れない」そうで「家族で水を飲んでいるのは20年やっているが初めて見た」とのこと。

かなりラッキーだったようだが、とにかく写真に収められなかったのが残念でならない。

倒木をくぐり抜け、ガイドさんとの会話を楽しみつつ、カヌーツアーも気がつけば終盤。

初夏になればさらに美しい風景が広がるそう。これからの時期、みなさんにも、ぜひ体験してもらいたい。

14時30分、約1時間のカヌーツアーが終了。

あっという間だったが、濃密な1時間だった。北海道ならではの体験。さらに水に癒やされた。気持ちが軽い。最高だ。

ガイドさんに別れを告げ、次に訪れたのはJR釧網線「川湯温泉駅」。

ここの構内にある喫茶店「オーチャードグラス」では、摩周の湧き水で淹れた珈琲が飲めるという。

駅の入り口横には摩周の湧き水の水道が。

蛇口をひねると冷たい水が出てきた。口に含むとなめらかな飲み心地。この水で淹れた珈琲。否が応でも期待が高まる。

15時、オーチャードグラス到着。何とも雰囲気のある佇まい。

店内に入るとマスターの武山秀樹さんが出迎えてくれた。

マスターにブレンドコーヒーを1つお願いすると、屈託のない笑顔で答えてくれた。

「こだわりは自家焙煎したオリジナルブレンドの珈琲豆と、摩周の天然水だよ」。珈琲を淹れながら、そう話すマスターの横顔に、思わず私も笑みがこぼれた。

「おまたせ。ゆっくり飲んでいきなよ」。そう言って出してくれたのはブレンドコーヒー(370円)。

趣のある駅舎で飲む、摩周の水で淹れた珈琲は雑味がなく深い味わい。カヌーで少し冷えた身体を温めてくれる。今日の旅の思い出をマスターと話しながら、珈琲をいただく。

珈琲を飲み終えたころ、ちょうど駅に電車が。

1両編成ワンマン運転の電車は、上り下り合わせても1日に11本しか来ない。

時刻表を眺めながら少しさみしくなりつつも、マスターに挨拶して、今日最後の目的地へと向かった。

17時45分、最後にやってきたのは五色沼と呼ばれる神秘の湖「オンネトー」。

アイヌ語で「年老いた(大きな)湖」という意味を持つこの場所は、風向きや天候、見る位置によって湖の色が変化するそうだ。

私が到着した夕方、オンネトーは緑のグラデーション。

後ろにそびえる雌阿寒岳(めあかんだけ)と阿寒富士(あかんふじ)は真っ赤に染まっていた。ぼんやりと景色を眺めながら一日を振り返る。

本当に素敵な時間だった。気温は暖かく、心地よい風がどこの水辺でも吹いていた。耳を澄ますと聞こえてくるのは、川のせせらぎと鳥の鳴き声。「また必ず来ます」オンネトーに別れを告げて宿へと向かう。

オンネトーの帰り道、すぐ横にシカが現れた。今度は声をださないよう注意しながらゆっくりシャッターを切る。

「また来いよ」。シカがそう言ってくれたような気がした。

ありがとう北海道。必ずまた来るよ。

<旅の行程>

旅の行程

神の子池
住所:北海道斜里郡清里町清泉
サイト:https://www.kiyosatokankou.com/kaminokoike.html(きよさと観光協会HP)

裏摩周展望台
住所:北海道斜里郡清里町
サイト:https://www.kiyosatokankou.com/uramashuu.html(きよさと観光協会HP)

リバー&フィールド
住所:北海道川上郡弟子屈町 屈斜路市街地2条通8
TEL: 015-484-2002
営業時間:8時~17時
公式サイト:http://www.riverandfield.com/

オーチャードグラス
住所:北海道川上郡弟子屈町川湯駅前1丁目1−18
TEL: 015-483-3787
営業時間:10~17時

アイヌ食文化物語 レストラン丸木舟
住所:北海道川上郡弟子屈町屈斜路コタン
TEL: 015-484-2644
営業時間:11~19時
サイト:https://marukibune.jimdo.com/%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3/

文=平塚夏樹
写真=土田凌

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