「神の子池」「裏摩周」「オンネトー」——北海道でゆったり“水に癒やされる”旅
「清流」という言葉が好きだ。
神奈川で生まれ育った私にとって、美しい自然の水というのは身近なものではなかったからこそ、憧れがあるのかもしれない。
今回は、春の北海道で思いきり“水に癒やされたい”と、2泊3日の行程で巡ってきた。
前日に羽田からの最終便で女満別空港に到着。そこからレンタカーで網走へと向かい、ビジネスホテルで1泊した。
翌朝7時30分、初めて見るオホーツク海に感動しながら、道東の“水”に癒やされるため、一路、水底が青く光るという「神の子池」へ。
網走市内から神の子池へは車で約1時間半弱かかる。神の子池には住所がないので、カーナビにJR釧網(せんもう)線の「緑駅」をセット。
車内では、松山千春の『大空と大地の中で』を聞きながら北海道気分を高めつつ、安全運転でドライブを楽しんだ。
緑駅を過ぎると道路案内の青い看板が現れる。神の子池の入り口までは1本道だ。
入り口の看板から神の子池までは舗装されていない山道を2kmほどのぼる。
神の子池周辺は思っていたより気温が低くなく、心地よい風が吹いていた。それだけでも、ここまで来た価値がある。
道の横には小川が流れていた。これがまた美しい。
午前9時、神の子池に到着。
周囲220m 水深5mの小さな池は、摩周湖(カムイト=神の湖)の伏流水からできているという言い伝えから「神の子池」と呼ばれているそうだ。
水底が美しいブルーに光り、水が流れる音と、小鳥のさえずりしか聞こえてこない。
神の子池を小1時間ほど眺めていただろうか。ゆったりとした時間が過ぎていく。
枝から新緑が芽吹きはじめていた。きっとこの記事を読んでくれた方がここを訪れるころには、一面緑でよりキレイなんだろうなぁなどと考えていた。
次に向かうのはアイヌ語で“カムイト=神の湖”と呼ばれる「摩周湖」。“神の子”を見た次は“神の湖”へと車を走らせる。
摩周湖には展望台が3つあるが、その中で神の子池からのアクセスもよく、最も観光客が少ない「裏摩周展望台」へ。少し雲行きが怪しいのが何とも心配だ。
10時30分「裏摩周展望台」に到着。神の子池からは20分ほどで着いた。
山頂の展望台ということで気温が低く、肌寒いぐらいだ。
正直な話、摩周湖はあまり期待していなかった。「神の子池から近いし、ついでに寄っておこう」程度で考えていた。
でもそれが大間違い。澄んだ空気と透明度の高い美しい湖が、眼下に広がる。アイヌの人々が“神の湖”と呼んだ理由がわかる気がした。
この感動を写真では伝えるのは、これが限界かも。ぜひ一度足を運んでほしい。
摩周湖を出た直後、まさにバケツをひっくり返したような大雨。北海道は道が真っ直ぐなので、どこから雨が降っているのか遠くからでもわかる。
午後は釧路川でカヌー体験をする予定なので、天気が心配だ……
と、思ったのもつかの間。いきなりの夏空。
道東の天候は変わりやすいのだろうか。とりあえずカヌーは乗れそうなのでひと安心。
11時30分、予定より早く屈斜路湖に到着。カヌーツアーは13時からのなので、ここで昼食休憩。
湖畔のレストランで「コタン丼」(1200円)をいただいた。甘辛い焼き肉風のタレに豚肉と行者ニンニク。これが絶品!勢いよくかきこんだ。
13時、今回カヌーツアーでお世話になる「リバー&フィールド」に到着。
釧路川をカナディアンカヌーで下る体験ができるということで、事前に電話で予約しておいた。
説明を受けてから、ガイドの方と徒歩で屈斜路湖畔へ。
私も知らなかったが、実は釧路川の源流は屈斜路湖だそうだ。ここから釧路市方面の太平洋まで流れ、途中、釧路湿原を形成している。
カヌーに乗るにあたっての注意点とパドルの漕ぎ方を教わったら、早速、湖へ。
13時15分、屈斜路湖をカヌーで出発。
この時期の屈斜路湖はシーズンオフということもあって私たち以外誰もいなかった。湖上を独り占め状態だ。感動のあまり、途中漕ぐのを忘れ、景色に見入ってしまっていた。
後ろのガイドさんが操舵をしてくれるので、力のないお子さんや女性の方でも十分楽しめそうだ。
屈斜路湖は遠浅で水が澄んでいるため、湖底がはっきりと見える。ガイドさんに許可をいただいて水に手を入れてみると、ヒンヤリ冷たい。
橋をくぐった先から釧路川。真っ暗な橋架下が釧路川への期待を高めてくれる。
13時25分、カヌーで釧路川へ。まだ木々は青々とする前だったが、とにかくワクワクが止まらない。
釧路川の上流は、流れが穏やかで、ゆったりとカヌーが進んでいく。
気がつくと車内で聞いていた『大空と大地の中で』を口ずさんでいた。
「ああ、最高だ」本当に何度もそう思った。
清流と風景、たまに現れる鳥たち。川の周りを木々が囲んでいて、人工建造物が見えてこないので没入感がすごい。
読者の皆さんにもこの雰囲気をより味わってもらえればと、音声も録音してみた。
カーブを曲がると3頭のシカの家族が、川の真ん中で、水を飲んでいた。
「あっ!!!シカだ!!!」私の大声が静かな川に響き渡る。当然シカたちは一目散に逃げていった。
なんとかレンズに収められたが、これが家族で水を飲んでいるシーンだったらなぁと嘆くとともに、自分の稚拙さに呆れた。
ガイドさんいわく、「シカは年に1〜2度しか現れない」そうで「家族で水を飲んでいるのは20年やっているが初めて見た」とのこと。
かなりラッキーだったようだが、とにかく写真に収められなかったのが残念でならない。
倒木をくぐり抜け、ガイドさんとの会話を楽しみつつ、カヌーツアーも気がつけば終盤。
初夏になればさらに美しい風景が広がるそう。これからの時期、みなさんにも、ぜひ体験してもらいたい。
14時30分、約1時間のカヌーツアーが終了。
あっという間だったが、濃密な1時間だった。北海道ならではの体験。さらに水に癒やされた。気持ちが軽い。最高だ。
ガイドさんに別れを告げ、次に訪れたのはJR釧網線「川湯温泉駅」。
ここの構内にある喫茶店「オーチャードグラス」では、摩周の湧き水で淹れた珈琲が飲めるという。
駅の入り口横には摩周の湧き水の水道が。
蛇口をひねると冷たい水が出てきた。口に含むとなめらかな飲み心地。この水で淹れた珈琲。否が応でも期待が高まる。
15時、オーチャードグラス到着。何とも雰囲気のある佇まい。
店内に入るとマスターの武山秀樹さんが出迎えてくれた。
マスターにブレンドコーヒーを1つお願いすると、屈託のない笑顔で答えてくれた。
「こだわりは自家焙煎したオリジナルブレンドの珈琲豆と、摩周の天然水だよ」。珈琲を淹れながら、そう話すマスターの横顔に、思わず私も笑みがこぼれた。
「おまたせ。ゆっくり飲んでいきなよ」。そう言って出してくれたのはブレンドコーヒー(370円)。
趣のある駅舎で飲む、摩周の水で淹れた珈琲は雑味がなく深い味わい。カヌーで少し冷えた身体を温めてくれる。今日の旅の思い出をマスターと話しながら、珈琲をいただく。
珈琲を飲み終えたころ、ちょうど駅に電車が。
1両編成ワンマン運転の電車は、上り下り合わせても1日に11本しか来ない。
時刻表を眺めながら少しさみしくなりつつも、マスターに挨拶して、今日最後の目的地へと向かった。
17時45分、最後にやってきたのは五色沼と呼ばれる神秘の湖「オンネトー」。
アイヌ語で「年老いた(大きな)湖」という意味を持つこの場所は、風向きや天候、見る位置によって湖の色が変化するそうだ。
私が到着した夕方、オンネトーは緑のグラデーション。
後ろにそびえる雌阿寒岳(めあかんだけ)と阿寒富士(あかんふじ)は真っ赤に染まっていた。ぼんやりと景色を眺めながら一日を振り返る。
本当に素敵な時間だった。気温は暖かく、心地よい風がどこの水辺でも吹いていた。耳を澄ますと聞こえてくるのは、川のせせらぎと鳥の鳴き声。「また必ず来ます」オンネトーに別れを告げて宿へと向かう。
オンネトーの帰り道、すぐ横にシカが現れた。今度は声をださないよう注意しながらゆっくりシャッターを切る。
「また来いよ」。シカがそう言ってくれたような気がした。
ありがとう北海道。必ずまた来るよ。
<旅の行程>
神の子池
住所:北海道斜里郡清里町清泉
サイト:https://www.kiyosatokankou.com/kaminokoike.html(きよさと観光協会HP)
裏摩周展望台
住所:北海道斜里郡清里町
サイト:https://www.kiyosatokankou.com/uramashuu.html(きよさと観光協会HP)
リバー&フィールド
住所:北海道川上郡弟子屈町 屈斜路市街地2条通8
TEL: 015-484-2002
営業時間:8時~17時
公式サイト:http://www.riverandfield.com/
オーチャードグラス
住所:北海道川上郡弟子屈町川湯駅前1丁目1−18
TEL: 015-483-3787
営業時間:10~17時
アイヌ食文化物語 レストラン丸木舟
住所:北海道川上郡弟子屈町屈斜路コタン
TEL: 015-484-2644
営業時間:11~19時
サイト:https://marukibune.jimdo.com/%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3/
文=平塚夏樹
写真=土田凌
[button style=’yellow’ url=’https://www.expedia.co.jp/Abashiri-Hotels.d6140787.Travel-Guide-Hotels’ icon=’entypo-home’ fullwidth=’true’]網走のホテルを探す[/button][button style=’yellow’ url=’https://www.expedia.co.jp/Cheap-Flights-To-Abashiri.d6140787.Travel-Guide-Flights’ icon=’entypo-flight’ fullwidth=’true’]網走への航空券を探す[/button][button style=’yellow’ url=’https://www.expedia.co.jp/Abashiri.d6140787.Travel’ icon=’entypo-info-circled’ fullwidth=’true’]網走旅行・ツアーを検索[/button]
ドコイク?に関するその他の記事
GWにおすすめの旅行先をご紹介!それぞれのおすすめのスポットやホテルをご紹介します。詳細はそれぞれのバナーをクリック!
次の旅先はお決まりですか ? 食や自然、芸術など、日本の魅力を満喫できる国内のおすすめの旅行先を 5 つご紹介します。
初めまして。酒と旅行がメインのブログを書いているcongiro(コンヒーロ)と申します。 普段から日本各地を旅しては、地元の方々が飲んでいる日常系の日本酒を好んで買って楽しんでいます。 特に好きなのは、その土地の日常酒を、その土地の方たちがいる酒場で飲むことですね。「誰かの日常は、私の非日常」。それを念頭に、いつも楽しく旅をしています。...
お世話になっております。会社員兼業ライターの赤祖父と申します。6歳男子、2歳女子の2児の父親でもあります。 前回に引き続き、今回も「息子に興味のあることを聞いてプランを組み立てる、親子ふたり旅」へ行ってきましたので、その内容をご紹介します。旅の終わりには、こちらも前回と同じく、思い出を絵に描いてもらいました。未就学児と旅をする上でおすすめの“鉄道体験”についても触れています。 「雪が見たい」の一言で、行き先は青森に決めた...
美味しいものとお酒、いろんな街を歩くのが好きなTakiです。 前回の新潟に続いて、ひと仕事終えた週末にふらっと旅に行くことにした。行き先は福島県。