投稿者 : 古谷 未来、投稿日 2017 年 8月19日

五感で涼む! 清流の町・郡上八幡で感じる日本の夏風情

年々、いや日々暑さを増しているような気がする今日この頃。そんなときこそ、エアコンのきいた部屋にこもらず、目や耳で涼しさを感じられる場所へ出かけてみませんか?岐阜県・郡上八幡は、約2カ月間続くロングラン盆踊り「郡上おどり」で有名ですが、日本三大清流の長良川の支流が流れ込む、ゆたかな水の町としても知られています。

町のそこここでみられる水のある風景、市街地を流れる吉田川で水遊びをする子供たちの歓声、街のどこを歩いても聞こえてくる水流の音、夕暮れに盆踊りの準備で聞こえてくるお囃子…。夏の風情たっぷりの町を歩いていると心から涼やかな気持ちになれるんです。町まるごとで日本の「涼」を感じる、郡上八幡の見どころをご紹介します。

水流の音を聞いて涼む水の町さんぽ

郡上八幡は長良川の上流に位置し、奥美濃の山々から流れ出た吉田川、小駄良川など三つの川が合流するところにあります。この恵まれた地形により、郡上八幡はまれにみる清流の町となりました。

「やなか水のこみち」は、郡上八幡を代表する水名所。繁華街の通りから一本入ったところにあり、柳の並木と立派な日本家屋に沿って流れる雰囲気のある路地です。玉石は長良川と吉田川の自然石で、八幡の名にちなんで8万個が使用されているそう。ここに限らずですが、郡上の町の水路はどこも水量が豊富で、ほとばしるような水流の音はとても涼やかです。「観光用の小径でしょ」なんて思っているとよい意味で裏切られるかも?

祠の下に湧き出る「宗祇水」は、環境省が選定した日本名水百選のなんと第1号。今でも採水していただくことができますが、口当たりがすごくまろやかなおいしい水ですよ。その名はこの近くに居を構えていたという、室町時代の連歌師・宗祇にちなんでいます。小さい祠ですが、歴史を感じるこの場所は、小駄良川に架かる橋の中でひときわ目立つ赤い橋「清水橋」のたもとにあります。

城下町らしい古い街並みがあるのは、大手町、職人町、鍛冶屋町。江戸時代の名残が感じられる地名ですね。このあたりの家々には、隣の家との境に張り出した壁があるのがわかります。これは袖壁と呼ばれるもので、屋根の軒を支えるのと、隣の家への延焼を防ぐためのものだそうです。そしてここでも軒下に水路が。通りに家々が密集していて、大火が二度もあった郡上八幡の藩主は火事への備えに敏感だったといいます。水路は生活用水のためだけでなく、防火のためでもあったんですね。そのおかげで、今も街並みが守られているというわけです。

旧八幡町役場

旧八幡町役場の建物だった郡上八幡旧庁舎記念館。今は観光案内所として使われています。

その向いにある木造二階建ての郡上八幡樂藝館は車寄せが立派で素敵です。元は林療院という民間の病院でした。郡上八幡旧庁舎記念館と並んで、昭和な洋風建築が好きなら見ておいて損はありません。室内の調度品もレトロで雰囲気があります。

吉田川の渓谷のような景観に目で涼む

町のシンボル吉田川にも行きましょう。市街地の中心部にあるのに、渦を作るほど流れが速い川の瀬と大きな岩が織りなす渓谷のような景観がそこにあります。そして水の透明度にも驚き。

吉田川にかかる新橋からの飛び込み

夏の風物詩として有名なのが、吉田川にかかる橋からの飛び込みです。地元の子供たちが橋の上から高飛び込みをするのですが、飛び込む前は周囲も一瞬静かになり緊張感が。そして飛び降りたときの着水音は「バッシャーン」とかなり激しいのです。それもそのはず、橋の上から見下ろすと、けっこうな高さがあることがわかり足がすくみます…。地元っ子は幼いころから川遊びをしながら、少しずつ高度を上げて訓練してきていて、新橋からの飛び込みはそのハイライトだそうです。真似をして我もと飛び込みをする観光客が後を絶たないようなのですが、事故も起きており素人がうかつにチャレンジするのは危険です!

「宮が瀬こみち」から見える川にせり出して建っている家々

川沿いにある「宮ヶ瀬こみち」という遊歩道からは川にせり出して建っている家々が見えます。この建築は市街地に山が迫った郡上八幡の地形ゆえ。清流の音を聞きながら川岸に立つ家々の暮らしを想像してみるのも楽しいです。

水を循環させる暮らしに学ぶ

この町の水風景で特徴的なのが「水舟」でしょうか。湧水や山からの水を引き込んだ、段差のある水槽のこと。最初の層は飲み水や、野菜や果物を洗うのに使い、次の層では食器を水洗いする。そして野菜くずやごはん粒などの食べ物の残りは、そのまま下を流れる水路に放されている魚のエサとなり、自然と水が浄化される、というじつに効率的な水利用法です。かつては日本各地にあったのかもしれませんが、日常的に使っている光景を見られるのは郡上八幡ならでは。
水舟
ほとんどが個人の敷地内にありますが、観光用に設置されたものは町中で見かけることができます。そうそう、郡上八幡の町歩きには水筒持参がおすすめ。水舟から冷えた水をいただいて、街歩きで乾いた喉をうるおしましょう。場所によってはスイカやキュウリを冷やしていることもあり目にも涼しい水舟の光景です。

生活用水路

いがわこみちもぜひ訪れたい水スポット。民家の裏を流れている生活用水路に、鯉やイワナが悠々と泳いでいます。水路には洗濯場が設けられていて、地元の人がすすぎものをしたりおしゃべりしていたり。水が町の暮らしの風景に溶け込んでいるのがわかります。

都会で生活していると、水がどこからきているかなんてほぼ気にしないですし、それどころか飲み水はミネラルウォーターを購入しています。それが郡上八幡に来ると、水は山や川から来てるんだなあと当たり前のことに気づき感動します。何より水がおいしいんですよね。うらやましいかぎりです。そして水を大事に使う生活を目にして、自らの生活を振り返り、いろいろと考えさせられてしまうのでした。

本気で踊る爽快感。郡上おどりで汗を出し切ろう

さて夕暮れが迫り、ようやく暑さも落ち着いてきました。どこからかお囃子の音が聞こえてきます。いよいよ郡上夏の夜のハイライト、郡上おどりに出かける時間です。400年以上の歴史を持つ「郡上おどり」は、7月初週から9月初週まで約2カ月間続くということも驚きですが、お盆にはなんと明け方まで踊り明かす圧巻の徹夜おどりがあるんです。期間中は町中のどこかで毎夜盆踊りが開かれています。

郡上おどり

盆踊りというと、近所の小学校や商工会議所でやっているのんびりしたものを想像するかもしれません(もちろんそれも味わい深いんですが)。でも郡上おどりは、ザ・本気。まず踊りが10種類もあります。曲調は落ち着いたものから、馬の手綱さばきを模した勇壮なものまでバラエティーに富んでいて、振り付けはこぶしを上げたり、地面を蹴ったりといった力強いものが多いのが特徴。とはいえ、動きはシンプルなので、初めての参加でもすぐに覚えられるはず。

郡上おどり

そもそも郡上おどりは、江戸時代に当時の藩主が領民の融和を図るために、身分の隔てなく無礼講での踊りを推奨したのが始まりといわれます。そうした伝統もあって、郡上おどりは見るものではなく、踊るもの。観光客であっても果敢に参加するのが基本です。できたら下駄の音を響かせながら町を練り歩く(踊る?)と、テンションがさらにアップします。夏の暑さは盆踊りの熱気で吹き飛ばしましょう!

口で涼む!水がよければ食べ物もおいしい、郡上八幡グルメ

水がよいところにはおいしい食べ物がある、これは定説。郡上八幡も例外ではなく、湧水を使った、つるっとしたのど越しのうどんやそば、郡上の水に放って臭みを抜いたうなぎなど、水を上手に使った料理で知られます。。

長良川でとれる天然鮎

もちろん長良川でとれる天然鮎や川魚料理はマストですよね。地元の名水を使用した日本酒もあります。町の老舗上田酒店の「大吟醸 蔵の風」は県外の人からも人気。

ご当地グルメでは、地の味噌を使ったこってり味の「鶏ちゃん」という鶏肉炒めや奥美濃カレーが話題です。明宝ハムは鉄板のお土産品ですね。生で薄切りも、厚切りを焼いてもどちらもいけます。郡上八幡商店街の中にある丸一精肉店の名物飛騨牛ミンチを使ったコロッケは町歩きのお供にどうぞ。

ここも行きたい!雲海に浮かぶ郡上八幡城

「天空の城」として一躍ブームを巻き起こしたのは、兵庫県にある竹田城ですが、じつは郡上八幡城も山高くに佇み、雲海の中に浮かび上がる「天空の城」なんです。

郡上八幡城
©内田勝美

気象条件が合えば幻想的なショットをカメラにおさめることができます。この山城の天守閣からは郡上八幡の町が一望できて気持ちよいので、長い階段や坂にくじけず、お城を見学してみてください。

「涼」を感じる町・郡上八幡を熱く語ってしまいましたが、日本の夏を感じたい、水が織りなす風景や音に心を洗われるデトックス体験をしたい方にはおすすめの町です。ただ、「郡上おどり」期間中は、やはり観光客であふれかえります。ゆっくりと郡上八幡の雰囲気を味わいたいなら、あえてこの時期をはずすのもあり。水路や川岸などは人が少ないときのほうがせせらぎの音を楽しめますし、郡上八幡城の周辺に雲海が現れやすいのは秋から春にかけての明け方です。ちょっと足を伸ばせば清水をもたらす鍾乳洞もあり、盆踊り以外にも一年を通じて楽しみがあるのでぜひ一度訪れてみてくださいね。

車を利用の場合は、東京から4~5時間、大阪からは約3時間、名古屋から約80分。いずれも高速道路を利用した所要時間です。高山から約60分、下呂からは約90分。高山や下呂温泉に宿泊して、白川郷を含めた奥美濃地方をめぐる方も多いようです。

東京、京都、大阪、名古屋からは高速バスが出ているので、うまく使って効率的に旅をすることも可能です。電車利用ならば、名古屋から岐阜、美濃太田を経由し、長良川に沿って走る長良川鉄道で約2時間10分。鉄道旅が好きな人にはこちらののんびりプランもおすすめです。

写真提供・郡上市観光連盟

[button style=’orange’ url=’https://www.expedia.co.jp/Takayama-Hotels.d6048192.Travel-Guide-Hotels’ icon=’entypo-home’ fullwidth=’true’]高山のホテルを探す[/button]

[button style=’orange’ url=’https://www.expedia.co.jp/Bangkok-Hotels.d178236.Travel-Guide-Hotels’ icon=’entypo-home’ fullwidth=’true’]下呂のホテルを探す[/button]

[button style=’orange’ url=’http://ryokan.expedia.co.jp/avail/210206′ icon=’entypo-home’ fullwidth=’true’]郡上八幡の旅館を探す[/button]