元和元年(1615年)、古くから貴族の別荘地だった桂に八条宮(後の桂宮)初代智仁親王が手掛けた桂山荘が完成したことから始まった桂離宮。煌びやかさよりも簡素清明な建物を作ること、源氏物語の情景を表現することに目的を置いて工事が実地された回遊式庭園です。
桂離宮には茶室が4つあります。どれも粗野な材料で建設されたものですが、茶室から目的のものが最も良く見えるように、そして建物自体も極上の美しさを持つように計算しつくされています。たとえば、観月のための茶室として造られた月波楼(げっぱろう)は池に移り込む月を最高の位置で見ることができるように設計されています。一方で、賞花亭(しょうかてい)は桜の木に囲まれており、外から見ても最も美しい茶室です。
建築美と庭園美を絶妙に融合し、調和のとれた造形を目にしたドイツ人建築家のブルーノ タウトは、桂離宮を「泣きたくなるほど美しい」と絶賛。後に出版された彼の本で紹介しました。その本がきっかけでフランスのル コルビジュやドイツのヴァルター グロビウスをはじめとする様々なモダニズムの建築家の間で、ヨーロッパから遠く離れた京都の庭園が人気を集めたのです。
参観するには事前に宮内庁京都事務所に申請をしなければなりません。許可が下りて見学へ行くと、まず桂離宮の別邸についてビデオを見ることを義務付けられます。その映像には見学する際のルールと撮影が禁止されている所や許可されている場所について説明や注意事項が告げられます。別荘の建物に上がることはできませんが、外からモダニストが敬意を表した建物の内部を覗くこと可能です。ガイド付きのツアーが実地されていますので、興味があれば、ぜひ。
「泣きたくなるほど美しい」と絶賛され、最高の名園(日本庭園)といわれた京都を代表する総合芸術の空間。西洋化が進んだ現代社会で見失いがちな「わび さび」と和の心に触れてみませんか。
アクセス: 市バス桂離宮前から徒歩8分。参観には数日前までに宮内庁京都事務所管理参観係に申請する必要あり。参観は平日9:00~15:30。